
さまざまなAIツールを使うほどAPIコストが積み上がっていく、あるいは入力したデータがどこでどう扱われているのか分かりにくくて不安、と感じたことはないでしょうか。
さくらのVPSでのAI活用については、こちらのコラムで基本的なメリットを紹介しています。
この記事では、そのAI活用を支える選択肢の一つである「さくらのAI Engine」について、特徴と使いどころ、そして「さくらのVPS」と組み合わせることでできることをご紹介します。
さくらのAI Engineとは
さくらのAI Engineは、LLM(大規模言語モデル。文章の生成や要約、質問への回答などができるAIの仕組み)をAPI(プログラムやツールから呼び出して使うための窓口)経由で利用できる、さくらインターネット提供のサービスです。
自分で非常に高価なAIモデルを動かすサーバーを用意しなくても、APIを呼び出すだけで、チャットボットや要約ツール、FAQ対応の自動化など、さまざまな場面にAIの機能を組み込むことができます。
もちろん一般的なAIの利用方法であるChatGPTのような画面を自分専用に用意することもできますし、Claude Codeのようなエージェント、AIツールを利用して複雑なシステム開発に利用することもできます。
なぜ、わざわざChatGPTではなくAI Engineを使うの?と思われる方もいらっしゃると思いますので、この後メリットを紹介していきます。
AI Engineの強み
コストを抑えやすい
AIを動かすサーバを自分で用意しようとすると、数千万円単位で費用がかかり、データセンターにラックを借りたりメンテナンスする人の手配をする必要があります。AI Engineはこうしたインフラ部分からAIを動かすサーバーのOS、ミドルウェアなどのメンテナンスまでもさくらインターネットが行い、お客さまからは「使った分だけ」お金を頂くというサービスになっています。自前でAI用のサーバーを持つ必要がなく、必要な分だけ利用する形になるため、初期投資、ランニングコストを抑えて始めることができます。
国内サーバー完結・入力データは再学習に使われない
AI EngineはシンプルにAIを動かしているだけなので、入力したデータや生成された結果は、AIモデルの再学習には利用されません。データの再利用をしないと明示されている設定やプランを選択しない限り、ChatGPTなどのAIツールはAIを賢くするために入力したデータや生成結果を再利用します。「○○という質問に△△と回答した。その結果、ユーザは××と返した」という一連のやりとりを学習することで、よりAIを賢くするのです。これは、機密情報などを扱う上で非常に大きな問題になります。再学習に使われないというメリットは非常に大きいのです。
また、AI Engineのサーバは国内のデータセンターに存在することが保証されています。データをどの国の法律で守るのか?といった観点が昨今重視されますが、日本国内のサーバーで運用されていることも大きなメリットのひとつです。
OpenAIのAPI形式に対応
多くのAIツールが対応している「OpenAI」のAPI形式(エンジニアの間で広く使われている、AIサービスとやり取りするための共通の書式)に対応しています。既存のツールやプログラムのコードを大きく書き換えることなく、接続先の設定を切り替えるだけで乗り換えやすい点が特徴です。
AI Engine内でも複数のAIモデルが利用できますが、全てこのOpenAIのAPI形式で提供されるため、モデルを切り替えたいと思ったときも気軽に設定を変えることができます。
今後さまざまなLLMモデルに対応予定
現時点の対応モデルに加えて、今後は用途に応じて選べるよう、対応するLLMモデルを拡大していく予定です。チャット・要約・翻訳など、目的に合わせたモデルを選べる環境が今後さらに広がっていきます。
どんな人に向いている?
- Webアプリや社内システムにAIの機能を組み込みたい開発者・エンジニアの方
- 顧客データや社内文書を扱いながらAIを活用したい、企業・組織の担当者の方
- コストを抑えて小さく始めたい、個人開発者やスタートアップの方
既に使っているAIツールの裏側を、よりコスト効率がよく再学習されない、国内データセンターの基盤に切り替える、という使い方も可能です。
さくらのVPSと組み合わせるとできること
AI Engineの特徴を見てきましたが、AI活用を実際に運用していくには、AI Engineを呼び出す側の「置き場所」も必要です。ここで役立つのが「さくらのVPS」です。
AI活用には大きく分けて2つの役割があります。AIモデルそのものをどこかに用意して動かし続ける役割と、そのAIモデルをAPI経由で呼び出して実際に使う役割です。AI Engineが前者(AIの「頭脳」の役割)を引き受けてくれるため、利用者が用意するのは、AI Engineを呼び出すプログラムやツールを動かす場所、つまり後者の役割だけで済みます。
AIツールを使う際に、手元のPCにClaude Codeなどをインストールして使う方法と、さくらのVPSのようなサーバーを用意して、そこへAIツールをインストールして使う方法があります。ちょっと試してみるだけ、あくまで個人で使う、常時動いてなくてもよいといった場合は手元のPCの方が低コストで済みます。しかし、Webシステムの開発をしたり、ChatGPTのようなチャット画面をオリジナルで作って提供したいといった場合はかならず「サーバー」が必要になります。ここで、さくらのVPSの出番となるわけです。
VPSがAIツールの実行環境として向いている理由は、大きく3つあります。
- まっさらで安全な専用環境を用意できる: 他の用途と混ざらない、AI活用専用のサーバー環境を用意することができます。既存データをAIから見れてしまう環境よりも各段に安全性が高まります。
- 24時間365日動かし続けることができる: 常時稼働のBotや定期処理、常に応答が必要なAIを使ったWebサービスなど、動かし続ける必要がある用途に向いています。
- そのまま開発環境にできる: さくらのVPSは一般的なLinuxのサーバーなので、PythonやGoといったプログラミング言語を動かすことができます。AIがコーディングしたものが同じサーバー内ですぐに動きます。
サーバーと聞くと、黒い画面でいろいろな設定を打ち込まないといけないと思われるかもしれませんが、スタートアップスクリプト(サーバー作成時に選ぶだけで、必要なソフトウェアのセットアップまで自動で行ってくれる仕組み)を使えば、DifyやOpen WebUIといった、AI Engineと組み合わせて使えるAIツールを簡単にセットアップすることができます。
さくらのVPSでAIツールを動かし、さくらのAI Engineで推論する。この組み合わせにより、実行環境もAIの頭脳も、どちらも国内で完結させることができます。
実際にAI Engineを使い始める手順(アカウント登録からトークン発行、VPSとの連携まで)は、初期設定編で詳しく解説しています。
AIツール
Claude CodeのようなAIツールは、もちろん1行コマンドなどで簡単にサーバーへインストールできます。
さくらのAI Engineを利用する場合は、OpenCodeのようなオープンソースのAIツールを利用するのが一般的でこれらのインストールも同様に簡単に行えます。AI EngineのAPIのURL、APIキーを指定することで比較的簡単に動かすことができます。
AIツールの利用はコーディングだけにとどまりません。ビジネス上の分析、ルーティンのレポート作成までこなせるうえに、データの再利用、再学習の心配がないという大きなメリットを享受することができます。
料金:無料から始められる
さくらのAI Engineは、無料の利用枠から始めることができます。実際の料金プランや無料枠の詳細については、公式サイトでご確認ください。まずは無料の範囲で試しながら、コスト感や使い勝手を確認していくことをおすすめします。月間3,000リクエスト無料のプランであれば、個人で使う分には驚くほどいろいろなことができます。
まとめ
さくらのAI Engineは、LLMをAPI経由で手軽に、かつ低コストで利用できるサービスです。国内サーバーで完結し、入力データが再学習に使われないという安心感もあり、社内システムやツールにAIを組み込みたい開発者から、まずは小さく試したい個人開発者まで、幅広い層に向いています。
さらに、さくらのVPSと組み合わせることで、AI Engineを呼び出すツールやアプリケーションを動かす専用の環境を、24時間安定して用意することができます。AI活用の「頭脳」と「動かす場所」を、どちらも国内で完結させたい方は、まずは無料枠からAI Engineを試してみてはいかがでしょうか。
- さくらのAI Engine: https://ai.sakura.ad.jp/sakura-ai/ai-engine/
- 実際のトークン発行・設定手順: 初期設定編(トークン発行までの公式マニュアルもあわせてご覧ください)
- さくらのVPS Open WebUIスタートアップスクリプト: https://manual.sakura.ad.jp/vps/startupscript/openwebui.html
- さくらのVPS Difyスタートアップスクリプト: https://manual.sakura.ad.jp/vps/startupscript/dify.html
- さくらのVPSでのAI活用の基本: 既存コラム「AI活用にも『さくらのVPS』がおすすめ!」